「3つの試練を乗り越えた挨拶をしてこい。あの塔に大僧正、ルークさんがいる」
スナイデルが指を指した。砂地の広場から階段を登ったところに赤い塔が建っている。塔の存在は知っていたが、初めて行くことを許された。
赤い塔の入口に立つ。剣聖・ルーク。どんな人なのだろう?
ギィイイイー。大きな扉を開いた。
「失礼します。リーベルと言います。3つの試練を終えた報告に来ました」
大きな声で挨拶しながら塔に入った。塔の中は以外と広くシンプルな造りになっていた。過剰な装飾はまったくないが、壁も床も掃除が行き届いている。心地よい清潔さを感じた。
きれいに磨かれた床の真ん中に一人のおじいさんが立っていた。
「ひさしぶりじゃの」
「あー!」
小さな村で会った、木彫りの彫刻を売っていたおじいさんだ。
「え?もしかしてあなたが・・・剣聖ルーク?ですか?」
「ひょっほっほ。『剣聖』かどうか知らんが、いかにも。わしがルークじゃ」
想像していたのと全く違っていた。四天王・ヒュードラ率いるモンスター軍と敵対しているモンマルトル勢力。そのトップであり、『力の聖石』を持つ剣聖ルークがおじいさんだったなんて。剣も持っていないし・・・。
「よく厳しい試練を乗り越えたの。少し話をしようか」
ルークは塔の奥に行ったかと思うと、お盆にお茶を2つ乗せて戻ってきた。
「ほれ、こっちへ来い。一緒に飲もう」
「ありがとうございます」
それからルークとたくさん話をした。どんなことをして遊んだのか、どこに行き、何を感じたか。これまで出会った人からどんな影響を受けたか。試練はどうだったか、など。
ルークは興味深そうに頷いたり質問をしながら聞いてくれた。リーベルからも質問をした。
「モンマルトル寺院はどうやって出来たんですか?」
「ふむ。この寺院な・・・」
ルークは話し始めた。
昔のことだ。邪悪なモンスターが今以上にはびこり、人々の生活を脅かしていた時代。ひとりの傑出した力を持つ青年がいた。
その青年は罪もない人々がモンスターに苦しめられている現実に小さい頃から憤りを感じていた。「自分が世の中を変える」という目標を達成するために自らを磨いた。
天賦の才能に恵まれた者が想像を絶する努力をするとどうなるか。剣術では彼と二合剣を交えることができる者はいない。そしてこの世のありとあらゆる魔法に精通し、自由自在に操ることができるようになった。
様々なタイミングで一緒に修行をしていた者もいる。どうしたら強くなれるか?教えを請われたこともあるが他人に教えることはせず、ひたすら己のみを鍛えた。一日でも早く目標をためには一瞬たりとも無駄にできないと考えていたからである。
そして力が満ちたと感じた時、青年は動き始めた。凶悪なモンスターに人々が苦しめられていると聞けばどこにでも行き、討伐した。
キシリア大陸はおろか、別の大陸に行くこともいとわない。どんなモンスターでも彼の相手になる者はいなかった。その地にはびこるモンスターをやっつける度に、人々から感謝され、喝采を浴びた。
古い歴史を持つ、ある小さな島国に行った時の話だ。その国は決して国土は広くはないものの土地が豊かで農業が盛んだった。
橋を挟んで向こう、大陸側にライバル国は存在していたが、この国は強固な軍隊を揃え、他国から住民を守っていた。平和な日常がそこにあったのだ。
しかしその時は勝手が違っていた。大陸から橋を渡ってやってきたのはライバル国の軍隊ではなく、モンスターたちだったのだ。
橋の向こうのライバル国はモンスターによって滅ぼされてしまったらしい。頑強な城に住民たちを避難させた上で当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのその青年に救援を要請したのである。
たまたま近くの地域にいた青年と連絡が取れたのは運が良かったというほかない。それからはあっという間だった。
脅威であったモンスターをやっつけてくれた青年を、国を挙げて歓待した。感謝の気持ちだという国王からの報酬を、その青年は決して受け取らなかった。国を救ってくれた英雄なのに、と国王は残念に思った。
小さなお姫様がお花で作ったネックレスをプレゼントしてくれた。お姫様自身がお城の庭に咲いている花で作ってくれたらしい。これは受け取った。
「お兄ちゃん、ありがとう」
お礼を言う小さなお姫様の表情を忘れることはできなかった。
歓待してくれるのはありがたいが、いつまでもここにいるわけにはいかない。自分の力を必要とする人々はごまんといるのだ。
青年は新たな旅に出た。地域を巡り、ひたすら困った人達を助ける。人々が喜んでくれるのは嬉しいし、自分がやろうとしていたことが実現できていることに満足はしている。が、同時に焦りも感じていた。
何か?「きりがない」のである。たった一人で行けるところは限られている。まるでもぐら叩きのようにあっちこっちを飛び回り、討伐する。
しかし永遠に終わりがないようにも感じていた。そのような想いが頭をもたげていた時のことだ。その青年の元に救援要請が届いた。
なんと数年前に訪れたあの島国からである。小さなお姫様の顔が頭に浮かんだ。一帯のモンスターたちは討伐したはずだが、何が起こったのか?
いずれにせよ抜き差しならない状況に陥っているらしい。ここから島国までは1か月はかかるだろう。あの国には強固な城と軍隊がいる。ある程度の時間は稼げるとは思うが、急がなければ。
昼夜を問わずに島国に急行した青年が見たものは炎を上げ、すでに陥落した城の姿だった。お姫様からもらったネックレスに手をやった。花は枯れているが、大事に持っているのだ。
「はあっ、はあっ」
呼吸が荒い。城の前で立ち尽くす。一体何があったのだ?お礼を言う住民たち。玉座に座った国王。そして小さなお姫様が脳裏に浮かんだ。
ぷつん。
何かが切れた音がした。そこからの記憶がない。気づいた時には城の中はおろか、島にいるモンスターを一体残らず全滅させて橋を渡っていた。
後日、たまたま旅に出ていたおかげで命が助かったその島国出身の男から話を聞くことができた。
数年前一人の青年に助けられた後、国は軍隊を解散したらしい。その理由はモンスターの脅威がなくなった上に大陸側のライバル国も滅んで敵がいなくなったからだ。
兵隊として国を守るのではなく、商人として国の産業を振興させる方向に舵を切ったのだ。もちろん反対意見はあったが、国王は
「もし、またモンスターが攻めてきたらあの青年に助けてもらえばよい」と言って改革を強行したとのことだ。自分で自分の国を守る意思を放棄してしまったのである。そのスキを別のモンスターにつかれたというわけだ。
青年は愕然とした。自分は今まで一体何をしてきたのだ。誰にも教えず、仲間もおらず、自分がたった一人で成し得たことは何なのだ?
他人に国を守ってもらったことが自ら国を守る気持ちを失わせ、逆にその国を滅ぼしてしまったのか?そうなら最初から守らなければよかったということか?そうしたら、あの国は、あの小さなお姫様は・・・悩んで、悩んで、悩み抜いた。
「考えた結果がこの、モンマルトル寺院じゃよ。誰かに助けられるのではなく、自分の意思で道を切り開く。自分1人で何かをするのではなく、育てる、教える、広める。そして誰か1人に頼るのではなく、一緒に考え、行動する。志があれば、人であろうがモンスターであろうが、ロボットであろうが関係ない。自分の意思で自分の人生を変えられる。そういった場所を作りたかったのじゃ」
コツ、コツ、コツ。
ルークが塔の端まで歩いていく。そして・・・
「もしかして、その青年って・・・その島国というのは・・・」
大きな扉を開いた。
ギィイイィー
まぶしい。きらめくような陽光が降り注いだ。この塔自体が高台にあるので景色が開けている。遠くにサギヌマ橋、そしてウォリス島が見えた。
「そうじゃ。若き日のわしじゃ。そして島国の悲劇を忘れぬよう、いつでもあの島が見える場所に塔を建てたのじゃ」
・・・言葉が出ない。すごい話だ。
「おぬしのように、自分で自分の道を切り開こうとする若者が出てきてわしは嬉しいわい。いつの時代にもいるようだの」
ルークはあごひげを撫でながら微笑んだ。
「さて、話はいったんここまでのようじゃの。ほれ見てみい。下が騒がしくなりそうじゃぞ?」
ルークが指す方向を見た。なんと!モンマルトルの門下生が稽古する砂地の広場に、雪崩のようにモンスターが攻め込んできた。
ウォオオォオー!
ドン、ドン、ドン、ドン、ドドドドドドン!
門下生が応援している。
「ルークさん!」
「うむ。行くがよい。仲間と一緒に、運命を切り拓くのじゃ」
リーベルは塔を出て広場に続く階段を駆け下りた。
四天王 ヒュードラ
全てだ!全てを破壊せよ!偵察隊が持ち帰った情報を元に圧倒的な戦力を用意してやったぞ。しかもヒュードラ様自ら出向いてやったのだ。スナイデルか?ルークか?生意気にもわしを狙ってきた魔女でもよいぞ?誰でもかかってくるがいい。噂では、キャプテン・クロは最近いないらしいな?クックックッ。なぜ知ってるんでしょーね?いわね~よ?仕事だからねぇ。聖石を3つ揃えて獄竜王ラージャ様とセム様を解放して差し上げるのだ!・・・ナダリィはどっちでもいいが。
ペンタコイン×3枚
①英語(TOEIC)や簿記などの資格や
受験勉強、お子さんの漢字/計算
学習など習慣づけしたいことを「
1日30分」あるいは「1日30回」
実施してください。
②1日できたらペンタコインを1枚ゲ
ット。四天王 ヒュードラは3枚持
っているので3日実施出来たら勝
利です。次のストーリーに進んで
ください。
四天王 ヒュードラの紹介
暗黒神官セムが誇るモンスター軍の最高戦力「四天王」のうちの1体。無敵の結界内にいる「極竜王 ラージャ」「暗黒神官セム」を解放しようとたくらむモンスター軍の総司令官。情報戦を重視しており、偵察隊や諜報活動に力を入れている。陰気な性格で人の秘密やうわさ話が大好き。本人は「仕事のため」だと思っているが、個人的な趣味であることは周りにバレている。