ガサッゴソッ。ギュッギュッ。
「おーい!まだか~い?」
「ちょっと待って!薬草はそろえたし、おにぎりはこのあさ袋に。ペンダントは・・・うん、忘れてないからこれでよし。おまたせジャン!さあ行こう」
一人の少年が木のドアから元気に外に出てきた。
冒険用の服に身を包み、お父さんからもらった剣をしっかり握りしめている。
背丈は学校でも大きい方ではなさそうだが、ズボンから出た足はカモシカのように引き締まり、すばしっこそうだ。
よほどうれしいのか、張り切っているのか。得意そうに鼻の穴がふくらんでいる。
「リーベル。ちょっと遅いんですけど。そしてなんでそんなに笑っているかな~?遊びに行くんじゃないんだよ?」
ジャンと呼ばれた少年が丸い顔をさらにふくらませて言った。
この少年はリーベルと背丈は同じくらいだが、肉付きがいい。そう、少しぽっちゃり系だ。
表情にはまだかわいらしさを残している。体のサイズからすると不釣り合いなくらい大きな弓矢を背負っている。
そう。彼らは生まれ育った町を離れ、長い旅に出ようとしているのだ。
しかもこれまで誰も成功したことのない目的を達成するために。その目的とは?
長い間、人類を苦しめているモンスターのボス、獄竜王を倒すことだ。
ここキシリア大陸は豊かな自然に恵まれているため、たくさんの動植物が生息している。
だが皮肉なことに、その環境は恐るべきモンスターにとっても好ましいものだった。
人類とモンスターはお互いの生存をかけて激しい戦いを繰り広げている。が、ボスである獄竜王を倒さない限り、平和は訪れないのである。
旅をスタートさせる二人の少年の一人、リーベルは「ナシノキの町」に住む男の子。お母さんは学校で魔法の先生をしている。
「普段は優しいけど、本気で怒ったらすごく怖い」
学校の友達はそう言うがリーベルは知っている。家ではもっと怖いと!
獄竜王を倒す旅に出たいと話をする時、あんなにドキドキしたことはなかった。
朝ごはんを食べている時に、できるだけ普通をよそおいながら伝えた。
話を聞いたお母さんは最初とても心配そうに、次に少しうれしそうに微笑んで言った。
「そう。自分で決めたのね?ならしっかりやってきなさい」
約束事はこうだ。旅の準備はすべて自分ですること。そして旅の間中、1つのペンダントを肌身離さず身につけておくこと。
そのペンダントはダイヤモンドのような、キラキラした宝石が埋め込まれている。
指で触るとつやつやしていていい感触だし、なんだか安心する。
出発の時のお見送りはない。旅立ちとはそういうものだとお母さんは言った。ちょっと無理しているようにも見えた。
お父さんはリーベルが小さいころからよく旅をしていたので、長い時間家にいるわけではなかった。
しかし家にいる時はずっと一緒に遊んでもらったし、楽しい思い出がいっぱいある。
強く、勇敢なお父さんみたいになりたいと思った。だから野山を走り、虫や動物を取るなどして鍛えてきたのだ。剣では大人にも負けない自信がある。
もう一人の少年は学校の友達のジャン。おくびょうでのんびりしたところもあるが、気の合う友達。一緒に修行をしてきた。
ジャンは弓矢が上手で遠い距離からでも的を射抜くことができる。
大人たちができないなら、ぼくたちで・・・と二人で獄竜王を倒す旅に出たのである。
「兵士さん、こんにちは~」
大きな声であいさつをする二人。
「おう!リーベルとジャンか。この砦を出るのかい?あまり遠くに行かないようにするんだよ」
「はい。わかりました」
「おう。じゃあ、気をつけてな」
兵士さんは手をふってくれた。砦をあとにするふたり。
「・・・ドキドキしたね」
とジャン。
「うん。ダマーバンド山に行くためにはエデンの砦を出るしかないからね」
とリーベル。
そう。二人はダマーバンド山に向かっているのだ。
目的は獄竜王を守っている無敵の結界を解くために必要な「勇気の聖石」を手に入れることだ。
「でもほんと、誰が何のために無敵の結界で獄竜王を守ってるんだろう。モンスターたちがボスを守るために違いないけど」
ジャンがつぶやいた。確かに獄竜王の話は現実の脅威であるのだが、謎に包まれている。
その話はこうだ。獄竜王が棲む城はリーベルたちが住むキシリア大陸の北西、ウォリス島にある。
ウォリス島とキシリア大陸は一本の広い橋でつながっており、モンスターたちは過去、幾度となくウォリス城からその橋を渡ってキシリア大陸に攻めてきたのだ。
人類対モンスターの戦いはこの橋を境に繰り広げられてきたと言っても言い過ぎではない。
もっとも今はすっかりモンスターに押されてキシリア大陸にごまんとモンスターが生息しているが。
ジャンが言った「無敵の結界」とは、この橋のキシリア大陸側からウォリス島まですっぽりと覆い尽くす強力な結界のことだ。
これまでどんな力のある剣士でも、高名な魔法使いでも、この結界を破ることに成功した者はいない。
だから「無敵の結界」と呼ばれている。簡単に言うと、この結界のせいで「ウォリス島に誰も入れない」のである。
島に誰も入れないから獄竜王を倒せない。倒せないから、人類に平和が訪れない。ということだ。
しかし、何も打つ手がないのか?というとそうではない。この無敵の結界を破る手立ては広く知られているのだ。
それは「勇気の聖石」「知の聖石」「力の聖石」という3つの聖石を全て集めて、キシリア大陸側の結界の3つのくぼみにはめる、という方法だ。
問題はその3つの聖石が恐ろしいモンスターに守られているということである。
「勇気の聖石」:悪魔の巣食う山(ダマーバンド山)にいる岩鬼 ガチロック
「知の聖石」:巨大ピラミッドを根城にする砂漠の暴君 ロドリゲス
「力の聖石」:モンマルトル寺院に住む剣聖ルーク
がそれぞれ所有し、守っているのだ。不思議なのが、なぜ無敵の結界の破り方がこれほど広く知られているのか?という点。
そして獄竜王を守るのであれば、聖石を隠すなり海に捨ててしまえばよい。そうするだけで誰も無敵の結界を破ることはできないのだから。
しかし彼らはそれをしないのだ。全ては謎に包まれている。
大人たちでさえどうすればよいか迷っている時、ある少年が考えた。
「わからないんだったら、実際に試してみたらいい」
それがリーベルだった。
そして今日。「勇気の聖石」があると言われる「悪魔の巣食うダマーバンド山」に向かうため、距離的に近いマエミヤの町に向かっているのである。
一歩一歩、歩みを進める二人。
この辺りは背の低い草原が広がっているが、地元の人たちの通り道だからだろうか。くねくねと草が生えていない砂地が道のように続いていて歩きやすい。
ササァアー。
少し緊張する二人を包み込むように心地よい風が吹き、草木が揺れている。朝早く出発したのだが、もう真上から日が照っている。
「ジャン。そろそろお昼ごはんにしようか」リーベルが言った。
「待ってました!僕から言ったら食いしん坊って思われそうで、言えなかったんだよね。そこらへんに座って食べよう」
大きな銀杏の木のそばに、ちょうど二人が座れそうなサイズの切り株があった。
「よっこらせ」
二人はその石に腰をかけ、風呂敷から用意してきたおにぎりを取り出す。丁寧に笹の葉で包んできた。
「はい。これはリーベルの。そしてこの大きい方がぼくの・・・」
「やっぱり食いしん坊だね」微笑むリーベル。
その時、
コロコロコロッ!
「おっとっと」
おにぎりが下に落ちた。
「ちょっとリーベル!気を付けてよ。土がついちゃったらどうするの?」
あわてておにぎりを拾い上げるジャン。転げ落ちないように、慎重におにぎりを石の上に置いた。
麻袋に入った水を飲もうとする。すると、
コロコロコロッ。
またおにぎりが落ちた。
「あれっ?おかしいなぁ。ちゃんと置いたはずなの・・・ん?」
モコッ。
「あれれ?」
モコモコモコッ。
なんだかお尻がムズムズする。
「ねえリーベル?なんだか・・・この石、動いてない?って~えぇぇぇ~?」
二人は切り株から滑り落ち、しりもちをついた。
なんと!さっきまで腰をかけていた切り株がモコモコと動き始めた。うねうね、くねくねしたと思うと、すぽん!地中に潜った。
息を飲んでいるとその穴からぴょこん、と大きな耳が出てきた。そして・・・キョロキョロと大きく真っ黒な瞳で外を伺っている。
「うさもぐらん!」
覚悟はしていたはずなのに、体が硬くなる。旅に出て初めてモンスターに出会ったのだ。しかも、想像すらしていなかった形で。
顔を見合わせ、うなづき合う二人。そして、それぞれ武器を手にした。そう。この時のために修行をしてきたのだ。
「行くよ、ジャン!」
リーベルの冒険が始まった。
地中の暴走族 うさもぐらん
もー。だれ?ぼくの背中の上でごそごそしてるのは?気持ちよく寝てたのにぃー。うん。うん。間違いない。君たちですね?ぼくを地中の暴走族と知っててやってるの?すごく速く動くよ~?うん。知らない。そーですか。はい。もー完全に怒ったっす。子供だからって容赦しないから!
①英語(TOEIC)や簿記などの資格学
習やお子さんの漢字/計算学習など
習慣づけしたいことを「1日30
分」あるいは「1日30回」実施して
ください。
②1日できたらペンタコインを1枚ゲ
ット。うさもぐらんは3枚持ってい
るので3日実施出来たらあなたの
勝利です。次のストーリーに進んで
ください。
地中の暴走族 うさもぐらんの紹介
穴掘りが得意で普段は地中にいる。
おなかがすくと地上に出てきて木の実を食べたりする。
夜行性で昼に寝て夜に活動する。
寝る時は背中だけ地上じ出す習性があり、人や動物に踏まれたりすることがある。おへそを押されると「メェー」と鳴いてしまう。