「無敵の結界と竜の王」。
その言葉を聞いて心穏やかでいられる人間はキシリア大陸に存在しない。
過去、そして今に至るまで人々を苦しめてきた恐るべきモンスター。
そのボスである竜の王は人類にとって恐怖と憎しみの象徴なのだ。
豊かな自然に恵まれたキシリア大陸を舞台に、モンスターと人類は激しい戦いを繰り広げてきた。
しかしそれは、戦いと呼ぶにはあまりに一方的であった。
モンスターのするどい牙と爪はたやすくヨロイをつらぬき、固いうろこは剣をはじき飛ばしたのである。
厳しい戦いであったが、人類も黙っていたわけではない。
武術や魔法といった力をみがき、町を守る砦や城壁を築いた。
そしてモンスターとの長い戦いを終わらせようと、選りすぐりの勇者たちが竜の王を打倒せんと旅に出た。
しかしその試みはことごとく失敗に終わった。
竜の王が棲む城が強力な結界で守られていたからである。
どんなに力のある戦士であろうと高名な魔法使いであろうと、結界を破壊することはできなかった。
ただ不思議なことに、この結界の解き方は広く知られている。3つの聖なる石を結界のくぼみにはめこむことだ。
「勇気の聖石」「知の聖石」「力の聖石」。
どこにあるのかわからない。強力なモンスターが守っているとも噂されている。
誰が何のために竜の王を守る結界を張ったのか。なぜその結界を解く方法がわかっているのか。深い謎に包まれている。
しかし、おそろしいモンスターにおびえつつも精一杯戦う人々の目には希望のかけらが浮かんでいた。
そう。彼らは知っていたのである。「白銀の勇者」の存在を。
その昔、モンスターに苦しめられ、人類が絶望に打ちひしがれていた時代。いつどこからともなく現れ、神がかった力で世界を救った勇者がいたことを。
お互い励まし合い、歩み続ける。「無敵の結界」を打ち破り、「竜の王」を打倒する勇者を待ち望みながら。